弁護士ゆきこの事件簿

弁護士@東京。気ままに日々の雑感をつづります。

【刑事】捜査に重大な違法があったとして無罪判決(GPSなど)

弊所の坂根真也弁護士が担当していた、GPS捜査の違法性が争点の1つとなっていた事件で、本日、無罪判決が出ました。
(厳密には、複数の事件のうち、争っていない事件もあるので、有罪判決の部分はありますが。)

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個人的に、刑事弁護の技術を磨くためには、
●優れた刑事弁護人と事件を一緒に担当することが一番で
●優れた刑事弁護人の法廷を傍聴することも有益
と考えているため、この事件の坂根弁護士の弁論も傍聴していました。

今日はせっかくなので判決も傍聴してきました。

結論として
●窃盗事件について共犯者との共謀を否定し無罪
覚せい剤の使用所持について、重大な違法捜査があったものとして証拠排除し、無罪

との判決でした。

共謀がなかった(犯罪自体していない)という事件はともかく、
覚せい剤の使用所持については犯罪をやったことは事実なのに、無罪になるなんておかしい、と感じる方はいらっしゃるだろうと思います。
でも、裁判所は、違法捜査だからといって、すぐに無罪判決を下すわけではありません。
(むしろ、結構な違法性を認定しつつも結論が有罪とすることの方が圧倒的多数です。)
先日の無令状のGPS捜査が違法捜査だと判断した最高裁平成29年3月15日判決も、結論自体は有罪でした。
問題となるのは、「証拠排除すべきほどに重大な違法捜査がなされたか」です。 

判決では、警察の捜査の違法性について、具体的に踏み込んだ判断がなされていました。
(傍聴席で聞き取りながらのメモなので、不正確ですが)

たとえば

●警察官二人の証言の信用性判断に際し、「明らかな虚偽であり、場当たり的で到底信用できない」と断言していました。
(つまり、警察官が明らかな偽証をした、と認定しました。ちなみに、防犯カメラに写っている客観的な警察官の行動と真逆の証言をしたりしていました。)

そのほか
●漠然とした嫌疑・期間を対象にしたままGPS捜査を長期間にわたって行い、その見直しをすることもなく、捜査メモも廃棄した警察の態度について、基本的人権の保障と適正手続を確保しつつ事案の真相を明らかにすべきという基本的な刑事訴訟の趣旨をないがしろにし、司法審査及び令状主義を軽視する態度である
●任意捜査にあたって、抵抗していない被告人に対して警察官が拳銃の銃口を向けるなどした行為についても差し迫った危険がなく、任意捜査の限界を超えた違法なものだ
などと判断し、被告人が警察官に任意提出した覚せい剤について、違法な捜査を直接利用したものだとして証拠排除しました。

 

 

余談ですが、無罪を争っている場合、判決では、主文の始まりの段階で「被告人は無・・・」か「被告人を懲・・・」という「は」か「を」かでとっさに判断できるというのは、よくある話なのですが、一部の犯罪を認めている場合は、まず「被告人を懲役●年に処する。未決・・・なお、公訴事実中・・・」と続いていくので、ドキドキがしばらく続きます笑。

 

★追記★

こちらは坂根のコメントが掲載されていました。

令状なしGPS捜査 一部無罪に “司法の審査を軽視” | NHKニュース

東京新聞:GPS捜査の証拠を排除 「令状なしは違法」最高裁判断後、初:社会(TOKYO Web)

 

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