弁護士ゆきこの事件簿

弁護士@東京。気ままに日々の雑感をつづります。

【会計不正】東芝の報告書と「事実」のとらえ方

東芝の「不適切な会計処理」問題について、第三者委員会の報告書が出ました。

それをめぐって、次々と、各方面から様々な見解が出てきていますね。

 

たとえば、郷原弁護士、久保利弁護士からは、早速、事実がほとんど書かれていないことなどについて強い批判がなされています。

 

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一方で、この報告書の位置付けを、公認不正検査士でもある山口利昭先生が今後の米国等での流れも見据えて分析されているこの記事もとても興味深いです。

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ちなみに、「公認不正検査士」(マイナーで何をしているのか知らない人がほとんどだと思います。)の普段の活動は、まさにこういう第三者委員会の報告書等を読み解き、不正の仕組み等を研究することが中心となっています。

私はまだ詳細は読めていませんが、公認不正検査士の間でも東芝の件はどうなっていくのか非常に注目が集まっています。

 

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ところで、この第三者委報告書の妥当性の問題はさておき、個人的に気になったのが久保利弁護士の指摘のこの部分。

今回の問題では「チャレンジ」がキーワードになったが、この言葉は一般的に使われるものだ。社長が発言した時のシチュエーションが分からないと、チャレンジが本来の意味での「挑戦」なのか。あるいは利益を水増しして「粉飾」するように命令したものなのか、どちらを意味するが読み解けない。

 何月何日、誰と誰が出席していた会議だったのか。発言と同時に机を叩いたのか、静かな口調だったのか。出席者は社長の発言をどう理解し、その場で財務部門は反論したのか。こうした具体的な内容を、明らかにする必要がある。

今回の件が、刑事事件にまで発展するのかはまだ分かりませんが
こういうことは刑事事件でよくあります。

つまり、普段使う言葉(今回でいう「チャレンジ」)に特別な意味を見いだし(粉飾の隠語、のように)、キーワードのように関係者の供述調書にちりばめることで、あたかも、その言葉を使っている人はすべて、隠語としての意味まで理解して使っているかのように絵を描くのです。

実際には、その人の立場や経験、能力など、様々な要因により、たとえ指示する側が「チャレンジ」に粉飾の意味を込めていたとしても、相手はまったく気づかず、文字通り「チャレンジ」としか捉えないこともあります。
立場が上にある人であっても、「まさか違法行為などするまい」と思っている人にとっては、気づかないままのこともあるでしょう。

抽象的なキーワードに惑わされることなく、どんなケースであっても、事実を1つ1つ積み重ねることが重要ですね。

 

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